
GMOプライム・ストラテジー株式会社 執行役員兼マーケティング部長の松隈です。
2026年を迎え、ビジネスの現場ではAIの実装が「実験」から「実戦」のフェーズへと完全に移行しました。しかし、皆様の組織では、AIへの投資に見合った「本当の成果」を実感できていますでしょうか?
昨年、2025年7月にMIT(米マサチューセッツ工科大学)のNANDAプロジェクトが公開したレポート『State of AI in Business 2025』が、現在のこの状況を鋭く予見していました 。この調査は、52の組織の代表者への構造化インタビュー、153名のシニアリーダーへのアンケート、そして300件以上の公開されたAI導入事例の体系的なレビューという、極めて広範なデータに基づいています 。
これほど大規模な現場の生の声と客観的な数値を突き合わせた結果、企業のAI投資の95%がゼロリターン(投資対効果なし)に終わっているという事実が明らかになりました 。今回は、このレポートを読み解きながら、組織内で生成AIの恩恵を受けられる人とそうでない人の差が広がる「GenAI Divide(生成AIの分断)」の正体と、その解決策として注目される「RAG(検索拡張生成)」の真の価値、そして乗り越えるべきハードルについてお話しします。

GMOプライム・ストラテジー株式会社 執行役員 兼 マーケティング部長
松隈 基至
プロダクト/サービスのマーケティング全般を担当。前職のSIerではハードウェアエンジニアからキャリアをスタートし、システムエンジニア、広報、商品/サービス企画、マーケティングなど幅広く経験。
95%の企業が陥る「GenAI Divide」の正体
企業は生成AIに300億〜400億ドルもの巨額投資を行ってきましたが、成功して数百万ドルの価値を生み出しているのはわずか5%のパイロットプロジェクトに過ぎません 。この勝者と敗者を分ける壁を、レポートでは「GenAI Divide(生成AIの分断)」と呼んでいます 。
この分断は、単に「AIを導入したか否か」ではなく、スキル格差、データへのアクセス権、ツールの使いこなし力の差によって、組織内でも恩恵を受けられる層とそうでない層が二極化する現象を指します。
「記憶喪失のアシスタント」が現場の分断を加速する
一般に普及している汎用的なAIツールは非常に優秀ですが、そのままエンタープライズの業務に組み込もうとすると壁にぶつかります。その最大の理由は、想定外のエッジケース(例外処理)に適応できずシステムが破綻し 、人間が何度フィードバックを与えてもそこから学習しないためです 。
実際の現場では、「基本はAという手順だが、この顧客だけは過去の経緯からBで対応する」といった例外が必ず発生します。AI自身がこうした自社特有のコンテキストを記憶しないため、ユーザーは毎回ゼロから前提条件を教え直さなければなりません。これでは、プロンプト作成スキルの高い一部の社員しかAIを使いこなせず、組織内の「Divide(分断)」は深まるばかりです。
ROIの真打ちは「バックオフィス」にあり
一方で、AIの恩恵を正しく受け取れた場合のインパクトは絶大です。AI予算の多くがセールスやマーケティングに投じられがちですが 、実際に劇的なコスト削減を生み出しているのは「バックオフィス」の自動化です 。顧客対応や文書処理におけるBPO(業務委託)コストを年間200万〜1000万ドル規模で削減するなど、静かに、しかし確実なROIを叩き出しています 。

RAGは「銀の弾丸」か? 期待と現実のギャップ
この「文脈の欠如」を解決し、GenAI Divideを縮めるための強力な技術的ピースとして注目されているのが「RAG(Retrieval-Augmented Generation:検索拡張生成)」です。
自社のマニュアルや過去の顧客データをAIに検索・参照させることで、単なる大規模言語モデルよりも信頼性のある応答が可能になり、業務固有のナレッジを活かした成果物が出せるようになります。つまり、「プロンプトの腕前に関わらず、誰でも有意義なAI体験を得られる(AI活用の民主化)」という大きなメリットがあります。
しかし、率直に申し上げましょう。「RAGを実装すればGenAI Divideはすべて解消する」というのは危険な誤解です。 RAGは文脈によって妥当性がある一つの重要ポイントであって、唯一の解ではありません。
RAGを単なる「魔法の箱」として終わらせないためには、以下の3つの壁を乗り越える必要があります。
- データ品質と整備の壁 RAGの精度は「検索するデータの質」に依存します。そもそも社内の知識資産が整理されていなければ、AIは間違った古い情報を自信満々に答えるだけです。データガバナンスとプライバシー管理が絶対条件となります。
- 人材・スキルの壁 RAG環境下でも、「どの知識をどう検索させるか」というコンテキスト設計や、モデルの出力評価・チューニングといった新たなスキルが求められます。このスキル育成(教育やプロセス改善)をセットで行わなければ、結局ツールを使いこなせる一部の層に格差が温存されてしまいます。
- ツール選択とインテグレーションの壁 ベンダー選択、API設計、そしてセキュリティ設計など、システム全体の工程設計力が問われます。経営陣や現場がAIツールに求める「明確なデータ境界」や「現在のツールへの最小限の混乱」 をクリアしなければ、現場には定着しません。
RAGの弱点を補うインフラ「MAGATAMA Stack」
レポートが指摘する第3の障壁「インテグレーションの壁」には、残酷な現実が示されています。AIツールを完全に自社内製(Build)した場合の成功率はわずか33%。外部パートナーと連携(Buy/Partner)した場合の66%と比較し、その成功率には2倍もの開きがあります。
このデータが示す通り、RAGをはじめとするAI導入において、セキュリティ設計や複雑なAPI統合を一から構築することは極めて高い投資リスクを伴います。この課題を打破し、確実な成功へと導くのが、プライム・ストラテジーの提供する『MAGATAMA Stack』です。
1. 強固なデータ境界によるガバナンスの確立
機密性の高い社内データの外部学習利用を防ぎ、セキュアなインフラ環境を構築します。さらに、「情報コレクション(*)」とMicrosoft Entra ID等の統合認証基盤を連携させた高度なアクセス制御により、ユーザーごとの参照権限管理を徹底。コンプライアンス上の懸念を完全に払拭します。
(*)MAGATAMA Stackの「情報コレクション」についてはこちらのコラムで紹介していますので是非ご覧下さい。
2. 「既存環境を活かす」AIの民主化
既存のWebサイトや社内ポータルへシームレスに統合可能です。ユーザーに新たなツールの習熟を強いることなく、日常業務の背後でRAGを稼働させることで、組織全体の生産性を底上げし、真の意味での「デジタル・ディバイドの解消」を実現します。

アクションプラン:人・データ・技術の統合へ
私たちが価値を生み出す「5%」の勝者側に入るためには、RAGという技術だけでなく、以下の戦略的セットが必要です。
- 「独自データ」のクレンジングとガバナンス: 「どのデータをAIに読ませれば業務が劇的に楽になるか」を洗い出し、まずはゴミデータを取り除くプロセスを進めましょう。
- 内製にこだわらず、MAGATAMA Stackで「小さく・早く」始める: 巨大システムをゼロから開発するのではなく、特定の狭い業務フローに絞ってRAGをスモールスタートさせてください。外部パートナーとの共創が成功の近道です。
テクノロジーは魔法ではありません。RAGは強力な武器ですが、それを活かす「データ戦略」と「プロセス改善」が伴って初めて、GenAI Divideという深い谷に橋を架けることができます。
もし、自社のAI導入が実務への定着や具体的な成果に結びついていないと感じたら、Web高速化とAIインテグレーションのプロフェッショナルである私たちプライム・ストラテジーにお声がけください。共にデータ資産を活かし、真のAI民主化を実現しましょう。
[MAGATAMA Stackの詳細・お問い合わせはこちら]https://www.prime-strategy.co.jp/magatama-stack/
執筆者/松隈 基至 GMOプライム・ストラテジー株式会社 執行役員 兼 マーケティング部長
福岡県生まれ。2025年11月にプライム・ストラテジーにジョインし、同社プロダクト/サービスのマーケティング全般を担当。
前職のSIerではハードウェアエンジニアからキャリアをスタートし、システムエンジニア、広報、商品/サービス企画、マーケティングなど幅広く経験。
趣味は音楽、釣り、ロードバイク、サバゲー、アクアリウムなど。


