
企業がWordPressサイトを運用する際、サーバ選択はとても重要です。
とりわけ、「コスト」「パフォーマンス」「安定性」に直結する部分ですので、どういったサーバを選ぶのかは重要な決断です。
しかし、サーバには「共用サーバ」「VPS」「クラウド」の3つの選択肢があり、それぞれ特徴が大きく異なります。
WordPressサーバの3つの選択肢とは?
大きく分けるとWordPressのサーバには3つの選択肢があります。それぞれ特徴が異なりますので、ここから分かりやすくまとめてみたいと思います。
- 共用サーバ(Shared Hosting)は、コスパが高い
- VPS(Virtual Private Server:仮想専用サーバ)はバランスがいい
- クラウドサーバ(Cloud Server)は柔軟性最強で使った分だけ費用発生
共用サーバ(Shared Hosting)は、コスパが高い
まずは共用サーバです。レンタルサーバをイメージしてもらえるとわかりやすいです。
そもそもサーバは皆さんが思い浮かべるような大きな物理的な機械ですので、このサーバを複数のユーザーで共有する形を取ります。
さくらのレンタルサーバー、エックスサーバー、GMOのConoHa WINGなどが有名だと思います。非常に安価で月に数百円から利用できるため、まずは共用サーバを使う、という方が多いです。
例えるのなら、使いたいユーザーはアパートやマンションの1室を借りるようなものです。
VPS(Virtual Private Server:仮想専用サーバ)はバランスがいい
続いてVPSです。VはVirtual(バーチャル)でPはPrivate(プライベート)ですので仮想的にプライベート空間を作ってそこを利用できるサーバです。1台の物理的な機械(サーバ)上に仮想化技術というものを使って複数の仮想的なサーバを構築し、ユーザーは仮想的にプライベートな空間で専用リソース(CPUやメモリなど)を割り当てて使うことができるものです。
さくらのVPS、エックスサーバーのVPS、GMOのConoHaが有名ですね。
例えるのなら、マンションで占有スペースを持つような感じでしょうか。ですので、共用サーバよりも柔軟性高く運用することができるようになります。
クラウドサーバ(Cloud Server)は柔軟性最強で使った分だけ費用発生
3つ目はクラウドサーバです。今ではクラウドサーバが主流となりましたので、多くの企業でWordPress用のサーバに関わらず使われています。SaaSのアプリケーションが増えてきたこと、クラウドストレージの普及なども「クラウド」というイメージを更に一般的にしましたね。
クラウドサーバで有名なのは、AWS(アマゾン)、Microsoft Azure(マイクロソフト)、Google Cloud(グーグル)といったアメリカ企業です。日本でもさくらインターネットのさくらのクラウドなどが有名です。
このクラウドサーバですが、AWSなどサービス提供をしている企業は、ものすごくたくさんの物理サーバをデータセンターで動かしており、それらを束ねた仮想環境を作っています。この仮想環境をユーザーは必要に応じて必要な分だけ利用するという形です。
ですので、小さいサイトやシステムで使う場合はそれに応じて小さめのリソースを使う形になりますし、だんだんサイトやシステムが大きくなってきたらそれに応じて柔軟にサーバの大きさや構成をブラウザ上から変更する事ができます。従来は自社でサーバルームを持って管理をしていたところから全てブラウザ上でどれだけ大きなサイトやシステムでも動かすことができるようになってきているというのがすごいです。
例えるのなら、必要に応じて部屋数を増やせる可変的な住居という感じでしょうか。

WordPressのサーバ3つの選択肢を一覧化
項目 | 共用サーバ | VPS | クラウド |
---|---|---|---|
月額コスト | 低(500円~3,000円程度) | 中(1,000円~10,000円程度) | 柔軟(数百円~数十万円、使用量・規模による) |
初期費用 | 低い~ | 中程度~ | 比較的低い~ |
パフォーマンス | 他ユーザーの影響を受けやすい | 安定(専用リソース) | 非常に高い |
カスタマイズ性 | 低い(制限あり) | 高い(root権限あり) | 非常に高い |
スケーラビリティ | 限定的 | 固定リソース(プラン変更が必要) | 柔軟に拡張可能 |
技術的知識 | 不要 | 必要(サーバ管理の基礎知識) | 専門知識が必要 |
管理負担 | 軽い(ホスティング会社が管理してくれる) | 中~重い(自社管理が必要) | 中~重い(自社管理が必要) |
適している企業 | スタートアップ、小規模サイト | 小〜中規模サイト、安定運用重視 | 小〜大規模サイト、中堅〜大企業、急成長企業 |
※上記は一般的な目安であり、サービスやプランにより異なります。
WordPressのサーバ3つの選択肢のメリットデメリットとは?
ここまでがWordPressで使われるサーバの概要でした。それではもう少し深掘りしてみます。メリット・デメリットを見ていきましょう。
共用サーバは、安価で利用しやすいが小さめのサイトに限る

まずメリットとしてはこちらです。
- 💰 低コスト:月額500円~3,000円程度で始められる
- 🚀 簡単導入:WordPressの自動インストール機能があり、専門知識不要
- 🛠️ 運用負荷が軽い:サーバ管理はホスティング会社が担当するため、専任の技術者が不要
そして、デメリットはこちらです。
- ⚠️ パフォーマンスの不安定性:他ユーザーの影響を受けやすい ※同じサーバ上の他サイトがアクセス集中すると、自社サイトも遅くなる可能性
- 📉 リソース制限:CPU・メモリ・ストレージに上限があり、大規模サイトには不向き
- 🔒 カスタマイズは難しい:サーバ設定の変更ができず、特殊な機能追加が困難
- 📊 スケーラビリティは難しい:アクセス急増時に柔軟な対応ができない
比較的利用しやすく、初心者や小規模のサイトに適しているのが共用サーバです。サーバの管理も特に気にしなくて良いという点も大きなメリットとなります。
しかし、あくまで「共用」であることや利用するサイト・システムに応じた柔軟性は少ないため、規模を大きくしていきたいサイトには適さないサーバと言えます。
【こんな企業やサイトに向いています】
- 💻️ 月間数百〜千PV程度の小規模サイト
- 💻️ 初めてWordPressを導入する企業のサイト
- 💻️ 初期コストを最小限に抑えたい企業のサイト
VPSは、柔軟性が増すが自分たちで保守管理が必要

メリットはこちらになります。
- ⚡ 安定したパフォーマンス:専用リソースが割り当てられ、他ユーザーの影響を受けにくい
- 🎛️ 高いカスタマイズ性:root権限があり、OSやミドルウェアの設定を自由に変更可能
- 💵 コストパフォーマンス:専用サーバより低コストで専用環境を構築できる
- 🔐 セキュリティ向上:独立した環境で、独自のセキュリティ対策を強化できる
デメリットはこちらです。
- 🧑💻 技術的知識が必要:以下のようなサーバ管理・設定の知識が求められる
- Linux/Windowsの基本操作
- ファイアウォール設定
- セキュリティパッチの適用
- ミドルウェア(Apache、nginx、MySQLなど)の設定
- 📊 スケーラビリティに制限:リソース増加にはプラン変更が必要で、即座の拡張は困難
- 🔧 運用負荷:自社でのサーバ管理・保守が必要になる場合が多い
共用サーバと比較して、「専用」サーバですので他のサイトの影響を受けることもなく安定した稼働が実現できます。また、ある程度のカスタマイズ性もあるのがVPSの良さと言えます。一方で、自分たちでサーバの保守運用を行う必要があるという点があるのでここはデメリットとしています。
【こんな企業やサイトに向いています】
- 💻️ 月間数万PV程度〜の中規模サイト
- 🏢 ある程度の技術リソース(社内エンジニア)がある企業
- 🏢 カスタマイズや独自機能の実装が必要な企業
クラウドサーバは、管理の負荷はあるが柔軟性などの「自社に応じた」対応がピカイチ

メリットはこちらです。
- 📈 柔軟なスケーラビリティ:アクセス増加に応じてリソースを即座に拡張可能
- 🌐 高可用性:複数サーバでの冗長構成により、障害に強いシステムを構築可能
- 🚀 高パフォーマンス:最新技術とインフラで最高速度を実現
- 🔄 BCP/DR対策:災害時のバックアップ・復旧体制を整えやすい
デメリットはこちらです。
- 💸 コスト予測が難しい:従量課金制の場合、予期せぬアクセス集中で高額請求の可能性(いわゆる「クラウド破産」のリスク)
- 🧠 専門知識が必要:適切な設計・運用には高度な技術が必要
- ⏰ 管理負担が大きい:セキュリティ対策・アップデート・監視などを自社で対応する必要がある
クラウドサーバは、なんといっても圧倒的な柔軟性です。ビジネスは予期せぬことが常に起こる予測が難しい世界でもあります。Webサイトも同じで、突然アクセスが増加することもあれば、構成を変更してサーバダウンが起きづらい複数台構成(冗長化)をしていくことも出てきます。そういった中ではクラウドサーバの柔軟性はとてもマッチしています。
一方で、従量課金という特性上コスト予測が難しいことや運用管理の負荷が発生することはデメリットにもなりうると思います。ただ、コスト予測や運用管理については定額プランのマネージドサービスなどを使うことで解消する事が可能です。
【こんな企業やサイトに向いています】
- 💻️ 月間数百万PV以上の大規模メディアサイトやECサイト
- 💻️ アクセス変動が大きいキャンペーンサイト
- 🏢 事業の急成長が見込まれる企業
- 🏢 高い可用性やBCP対策が必要な企業
マネージドサービスを組み合わせるという選択肢

今回は、WordPressで使われているサーバの3つの選択肢を紹介してきましたが、専用サーバにあたるVPSとクラウドサーバは「自分たちで運用管理したり対応するのはちょっと難しいかな」と思っている方もいらっしゃると思います。
そこで有効な手段の1つが、「マネージドサービス」です。
何も、サーバ運用管理のような、自社の強みを活かさない業務を頑張って自社で行う必要はないので、クラウドサーバを利用しながらマネージドサービスと組み合わせて使うことはおすすめです。
マネージドサービス
マネージドサービスというのは、アプリケーション(WordPress)からインフラ(サーバ)まで、専門家が一貫して管理・運用するサービスです。技術的な運用はすべてプロに任せ、企業は本来の業務に集中できます。
マネージドサービスを使うメリットとしては以下のようなポイントがあります。
- 🔧 運用の完全な手離れ:WordPress/プラグインのアップデート、セキュリティ対策、死活監視、障害対応をすべて代行
- 💰 定額料金で予算管理が容易:サーバ費用・通信費込みで予測可能なコスト。従量課金による予期せぬ高額請求のリスクなし
- ⚡ 高速・安定・安全:最適化された環境で最高のパフォーマンスを実現
- 📞 24時間365日サポート:いつでも専門家に相談可能で、緊急時も安心
- 🎯 本業への集中:技術的な課題から解放され、マーケティングやコンテンツ制作に注力でき
こういったサービスを使っておくことで安心してWeb施策に専念できますし、それによって収益の増加を計画的に行っていくことが実現してきます。
このマネージドサービスですが、適している企業をいくつか挙げてみます。
- 社内に専任のサーバ管理者(エンジニア)がいない
- Webサーバの運用管理もできる技術者の採用が難しい
- 安定したサイト運用を最優先したい
- セキュリティ対策が十分ではないため、しっかりと対策をしていきたい
- BCP対策をしていきたい
- 今は兼務でなんとかしのいでいる状況のため、本来の業務(マーケティング、営業など)にリソースを集中したい
マネージドサービスの選択肢の1つが、KUSANAGIマネージドサービス

当社でもマネージドサービスを提供しており、大きな特徴としては、「WordPressサイトとサーバを一括して保守運用するフルマネージドサービス」ということです。
通常は、サーバのマネージドサービスはサーバ部分のみでWordPressの方は制作会社さんなどにアップデート対応などをやってもらう、という流れが一般的です。
しかし、プライム・ストラテジーでは長年のWordPressの知見とサーバ運用の知見から1社でどちらも一気通貫で対応することができます。
また、当社の独自ソリューションである超高速WordPress実行環境「KUSANAGI」をベースにしているため、表示速度の高速化から必要なセキュリティ対策までをすべて実現することができます。
対象サイトのボリューム感によって金額が変動しますが、月額10万円〜ご提供するサービスになりますので、ご興味ある方はサービスページもご覧ください。
KUSANAGIマネージドサービス:https://kusanagi.biz/managed-service/
WordPressのサーバを選定する際には、現状とこれからを見据えて最適な決定をしましょう
今回、WordPressで使われるサーバの3つの選択肢について取り上げてきました。これは今から新しいサイトを作る方だけではなく、今すでに何らかのサーバを使ってWordPressサイトを動かしている方にもお役に立てる内容だと思います。
ポイントは、WordPressサーバの選択は「今のニーズ」だけでなく「将来の成長」「運用体制」「リスク管理」を見据えた戦略的判断が重要だということです。
そして、専用サーバの場合はサーバの保守運用も必要となるため、技術的な運用負荷を軽減し、本来のビジネスに集中したい企業には、専門家に任せられる「マネージドサービス」が最適な選択肢となります。定額料金で予算管理がしやすく、高速・安定・安全なサイト運用を実現できます。
最後に、最適なWordPressサーバのチェック項目を書いておきます。
- 対象サイトの現在および将来的(例えば1年後)な月間アクセス数はどれくらいか?(複数あればそれをまとめてどのくらいか)
- 将来的な事業成長・アクセス増加の見込みは?
- 社内に技術リソース(サーバ管理者・エンジニア)はいるか?
- セキュリティ対策は社内で重要な項目か?
- BCP対策は必要か?
- サーバダウンによる機会損失のリスクはどれくらいか?
- サーバにかけられる予算はどれくらいか?(初期費用・月額費用・人件費を含む)
この内容が皆さまのお役に立てましたら幸いです。
執筆者/穂苅 智哉(プライム・ストラテジー株式会社 マーケティング&セールス部 マーケティング室 室長)
2016年からプライム・ストラテジーに入社し、営業・ディレクター・マーケティング・アライアンスを経験。
2021年から、外資IT企業にてパートナービジネスを担当する、Partner Development Managerとして、数十のパートナー企業様を担当し、双方のビジネス拡大のために活動。
2025年から、再びプライム・ストラテジーにてマーケティング室 室長として社内マーケやパートナープログラムなどを担当。
仕事以外では、旅行、釣り、ロードバイク、ドライブ、温泉・サウナ、ジャズ、カフェ巡りなどアクティブ派。今年はパラグライダーとキャンプをやってみたい。
主な著書:WordPressの教科書5.x対応版、WordPressの教科書6.x対応版