
プライム・ストラテジー株式会社 執行役員兼マーケティング部長の松隈です。
Webマーケティングの世界では、日々新しい手法やテクノロジーが登場しますが、その根底にある「消費者の心理変容」を捉えるフレームワークの重要性は変わりません。
今回は、消費者の購買心理モデルとして伝統的なAIDMA(アイドマ)と、ネット時代のスタンダードであるAISAS(アイサス)を軸に、現代のWebマーケティングにおいて技術(エンジニアリング)とマーケティングがいかに融合すべきか、という視点でお話しします。
1. 購買心理モデルの変遷:AIDMAからAISASへ
まず、これら2つのモデルの本質的な違いを整理しましょう。
AIDMA(アイドマ):マスメディア時代の基本
1920年代に提唱されたAIDMAは、消費者が購買に至るまでの心理プロセスを表す代表的なフレームワークです。マーケティング施策は、この流れのどこを強化するかを意識すると整理しやすくなります。
- Attention(注意)
商品やサービスの存在に「気づく」段階。広告や話題性で視界に入ることが重要。 - Interest(関心)
内容を知り、「少し詳しく知りたい」と思う段階。特徴やメリットへの理解が進む。 - Desire(欲求)
「欲しい」「使ってみたい」と感じる段階。自分ごと化やベネフィット訴求が鍵。 - Memory(記憶)
すぐには買わなくても、ブランドや印象が頭に残る段階。繰り返し接触が効果的。 - Action(行動)
実際に購入・申込み・問い合わせなどの行動を起こす段階。導線や後押しが重要。
このモデルは、テレビや新聞などのマスメディアが主役だった時代から現代に至るまで有効な指標ですが、消費者が受動的であり、企業側がいかに「記憶」に刷り込み、店頭での「行動」に繋げるかに焦点があります。
AISAS(アイサス):Web・ソーシャル時代の標準
インターネットの普及に伴い、2004年に国内広告代理店大手の電通が提唱したのがAISASで、主にインターネット時代の消費者行動を表すフレームワークです。
- Attention(注意)
広告やSNSなどで商品・サービスの存在に気づく段階。 - Interest(関心)
内容に興味を持ち、「もう少し知りたい」と感じる段階。 - Search(検索)
検索エンジンやSNS、口コミで情報を自ら調べる段階。 - Action(行動)
購入・申込み・来店など、具体的な行動を起こす段階。 - Share(共有)
体験や感想をSNSやレビューで他者に共有する段階。
AISASは「検索」と「共有」が入ることで、デジタル施策との相性が高いのが特徴です。
ここで決定的なのは、「Search(検索)」と「Share(共有)」という、ユーザーの能動的なアクションがプロセスに組み込まれたことです。

2. マーケターが陥る「Search」の罠と、エンジニアの役割
AISASモデルにおいて、マーケティング担当者が最も注力するのが「Search(検索)」、つまりSEOやリスティング広告です。しかし、ここでテクノロジーの視点が欠けると、大きな機会損失(ROIの低下)を招きます。
サーバーレスポンスと離脱率の相関
どれほど素晴らしい広告(Attention)でユーザーを惹きつけ、検索(Search)からサイトに誘導しても、ページの読み込みが数秒遅れるだけで、ユーザーは「Action」に至らず離脱します。
ビジネスインパクトの視点: Googleの調査では、モバイルサイトの読み込みが3秒を超えると、53%のユーザーが離脱するとされています。これは、マーケティング予算をドブに捨てているのと同じです。
ここで重要になるのが、エンジニアリングの介在です。高速な実行環境の構築やCore Web Vitalsの改善は、もはや単なる「技術的メンテナンス」の領域に留まりません。AISASにおける「Search」から「Action」へとユーザーを導くための、マーケティング戦略そのものなのです。
Webサイトの表示速度がマーケティング成果に与える影響については、こちらのコラムでも詳述しています。併せてご覧いただければ幸いです。
3. 「Share」がさらなる「Attention」を生む循環構造
現代のマーケティングにおいて、AISASの最後にある「Share(共有)」は、次のサイクルの「Attention」や「Interest」を強力にバックアップします。
- UGC(ユーザー生成コンテンツ)の活用: SNSでの口コミやレビューが、新たな顧客の信頼を獲得する。
- データの蓄積とAI活用: 共有されたデータや行動ログをAIで解析し、個々のユーザーに最適化された体験(LTVの向上)を提供する。
この循環を回すためには、マーケティング側が「語りたくなる文脈」を作り、エンジニア側が「スムーズに共有・計測できるインフラ」を整えるという、両輪の連携が欠かせません。
4. 明日から実践できるアクションプラン
理論を理解するだけでなく、具体的な一歩を踏み出しましょう。
- 自社サイトの「Search」後の体験をチェックする(Web担当者・エンジニア) Googleの「PageSpeed Insights」で自社サイトを計測してください。技術的な遅延がマーケティングの足を引っ張っていないか確認しましょう。
- 「Share」の障壁を取り除く(マーケティング担当者) ユーザーがAction(購入・資料請求)した直後に、SNSでシェアしやすい仕組みや、紹介したくなるインセンティブがあるかを再点検してください。
- 共通言語を持つ(全体) 「CVR(コンバージョン率)を上げるために、LCP(ページの読み込み速度)を0.5秒改善しよう」という会話を、部署を跨いで始めてみてください。

結びに代えて
AIDMAからAISASへ、そして現代ではさらにSNSを前提とした様々な購買心理や購買行動モデル(AISCEAS,DECAX,Dual AISAS,SIPSなど)も登場しています。しかし、変わらない真理は「ユーザー体験(UX)の向上が、ビジネスの成果に直結する」ということです。
テクノロジーはマーケティングを加速させ、マーケティングはテクノロジーに目的を与えます。この融合こそが、これからのデジタル社会を勝ち抜く鍵となります。
Webサイトの表示速度改善は、ユーザー体験(UX)向上の第一歩です。
次のステップとして、貴社Webサイトの現状と最適化後を分析・比較した、表示速度およびUX改善に関するレポートを作成してみませんか。
ご興味がございましたら、ぜひお気軽にお声がけください。
