
皆さまの企業では多くのWebサイトを保有し運用していると思います。その中でも、CMSとしてWordPressを採用している企業はとても多く、DataSign社の「上場企業CMS調査レポート 2025年8月度」(※1)によると、日本取引所グループ(JPX)の上場銘柄一覧に含まれている 3,807社(総URL数19,265)でWordPressが使用されているドメイン数は5,319サイト(前年比389サイト増)という結果が出ています。

ちなみに、世界のすべてのWebサイトの中で見ると、CMSサイトのシステムとしてのWordPressの利用率は執筆時点で60.7%と圧倒的で、すべてのWebサイトを分母にすると、なんと43.3%がWordPressを使っているという状況です。(※2)

そんな中で、WordPressのサーバの選択は事業の成功を左右する重要な決断です。しかし、多くの企業が適切な選択ができずに、後々に課題を抱えることになっています。
この記事では、そういった課題感を解消するためのWordPressのサーバを選ぶ際に抑えておくべきポイントについてお伝えしていきます。
(※1)https://oshiete-url.jp/report/cms/2025_8/
(※2)https://w3techs.com/technologies/details/cm-wordpress
企業のWordPressサーバ選びで失敗する3大パターン
- パターン1:初期コストの安さだけで選んでしまう
- パターン2:技術的な運用体制を軽視する
- パターン3:将来の成長を考慮しない選択
パターン1:初期コストの安さだけで選んでしまう
多くの企業にとって、サーバというのは不明確な部分の多い得体のしれないものかもしれません。更に、WordPressのサーバ選定に関してはWeb担当者やマーケティング担当者がメインで関与することも多いため、月額料金の安さだけに注目してサーバを選択することがあります。
コストパフォーマンスが良い選択をすることは大事なのですが、「安い」ということにフォーカスをしてサーバを選択すると、結局トータルコストが発生してしまうこともあります。
例えば、安価なサーバで運用をした結果、アクセス集中時にサイトがダウンし、本来そこでWebサイトを閲覧しビジネスにつながるかもしれない機会損失が発生するケースが後を絶ちません。また、セキュリティ対策が不十分で、後々高額な対策費用が必要になることもあります。
パターン2:技術的な運用体制を軽視する
運用体制については、「見えないコスト」ですのでなかなか見える化が難しいところですがとても大事です。
「まずはとりあえず動けばいいか」とサーバを選択したことで、とても大事なWordPress側のアップデートやセキュリティ対策を後回しにしてしまうパターンです。
結果として、Webサイトの脆弱性を放置することになり、サイバー攻撃の標的となるリスクが高まります。特に企業の看板があるサイトの場合、一度セキュリティインシデントが発生すると、評判などの信頼回復に長期間を要することになります。
パターン3:将来の成長を考慮しない選択
将来を見据えた柔軟性の観点も忘れないようにしたいです。現在のサイトへのアクセス数やコンテンツ量(ページ数や画像の容量など)だけを基準にサーバを選択してしまうことで、事業拡大に伴うサイトの成長を見込んでいないケースです。
これでは、ビジネスが軌道に乗ってアクセスが急増した際に対応ができず、別のサーバへの移行作業が必要になり、余分な時間とコストが発生してしまいます。
企業が重視すべき5つの選定基準
それでは、サーバ選びで失敗しないためにはどのようにするのがいいでしょうか。
今回は、企業・担当者や関係者の皆様が重視するべきポイントを5つに絞って説明していきます。
- 基準1.セキュリティ対策の充実度
- 基準2.パフォーマンスと安定性
- 基準3.サポート体制の質
- 基準4.コスト予測可能性
- 基準5.BCP(事業継続計画)対策
基準1.セキュリティ対策の充実度
企業のWordPressサーバにとって、セキュリティは最優先事項です。
まず大事なのは、「アップデート対応」です。WordPressのコア、使用しているプラグインやテーマのセキュリティアップデートは自動化して即時対応するようにしましょう。更にこれだけではなく、サーバ側のアップデート対応もあります。利用しているサーバのOS・ミドルウェア(PHPやApache/nginx, MySQL/MariaDBなど)はセキュリティ対応の中でも避けられがちですが避けて通れません。
続いて大事なのは、「WordPressへのログインの強化」「ユーザー管理」です。Basic認証などを使った管理画面アクセスの防御施策や適切な権限でのユーザー運用も必須です。
それ以外にも、任意ですがWAF(Web Application Firewall)、IPS/IDS(侵入検知・防御システム)、定期的な脆弱性スキャンなど、多層防御によるセキュリティ対策が実装されているかを確認しましょう。


基準2.パフォーマンスと安定性
サイトの表示速度は、ユーザー体験だけでなく Core Web Vital 指標に代表されるSEOにも大きく影響します。この表示速度に大きく関係しているのがサーバです。
そのサーバは高速化技術を採用しているか、キャッシュを適切に設定できるか、CDN(コンテンツ配信ネットワーク)と組み合わせるべきか、リソースの最適化はできるか、データベースの最適化はできるか、などを考えて選ぶべきです。
基準3.サポート体制の質
WordPressサイトも運用にあたっては技術的な対応が必要となります。
例えば、サイトトラブルが発生した際の迅速な対応です。サーバがダウンしてしまいサイトが見えなくなった、改ざんされたかもしれない、などの予期せぬ出来事にもしっかりと対応しておくことが必要です。サイトによっては1時間サイト閲覧ができないことで数百万円の想定被害となるケースもありますので、自社サイトの重みや売上へのインパクト、企業イメージの毀損などの影響を考えてサポート体制を考えましょう。
24時間365日のサポート体制、技術的な問い合わせへの対応品質、障害発生時のエスカレーション体制などを事前に確認しておくことが重要です。
基準4.コスト予測可能性
現在、企業WordPressサイトで使われているサーバはクラウドサーバが多くなっています。とても柔軟性が高く便利な半面、使った分だけ料金が発生する従量課金制です。
となると、アクセス集中時に予想外の高額請求が発生する可能性が考えられます。そこで、定額料金制のサービスを選択することで、予算管理がしやすくなり、経営の安定性に寄与します。初期費用だけでなく、運用にかかる人件費も含めた TCO(Total Cost of Ownership)で評価することが大切です。
その中でもクラウドサーバの柔軟性は企業にとって必要ですので、その場合には定額制のマネージドサービス(フルマネージドサービス)のプランを支援会社から利用することがおすすめです。
基準5.BCP(事業継続計画)対策
BCPというキーワードもとても重要です。
少し大きな話ですが、災害時やシステム障害時でも事業を継続できる体制が整っているかは、企業として求められるものです。
データのバックアップ体制(毎日取得されているか、バックアップの保持期間はどのくらいか)、復旧手順の明確化(ルールや対応者が決まっているか)、冗長化構成(サーバ2台構成、3台構成など)の採用などを確認しましょう。
一般的なレンタルサーバと専門的なマネージドサービスの違い
ここで、一般的に企業で使われる事があるレンタルサーバとマネージドサービスの比較をしてみます。
一般的なレンタルサーバの特徴
大きく、以下の特徴があります。
- 初期コストが安価で導入しやすい
- 基本的な機能は提供されるが、自社独自の対応はできないなど柔軟性に欠ける
- 他の利用者の負荷に影響を受けてしまうことがある
- トラブル時の対応範囲が限定的で即時復旧などが難しい場合がある
- スケーラビリティに制限がある

まとめると、安価でサクッと導入ができる反面、柔軟性は少なく他のユーザーの影響を受けてしまう事があります。かなり小規模なサイトであれば良いと思いますが、ある程度のアクセス規模があるサイトの場合、メリットよりもデメリットのほうが見えてきてしまうサーバかなと。ですので、適切にサイトの規模や影響度にあわせて決めることをおすすめします。
専門的なマネージドサービスの特徴
大きく、以下の特徴があります。
- 通常はクラウドサーバをマネージドすることになるため、クラウドサーバの柔軟性をフルに活用できる
- WordPress(アプリケーション)からサーバ(インフラ)までを一貫したサポートが可能なため、企業の担当者の方はほぼ手放しで運用ができる
- 専門エンジニアによる 24時間監視で異常があった際にはすぐアラートが上がる仕組み
- 予防保守によるトラブルの未然防止対応
- 事業成長やサイトのアクセス増減に合わせたスケーラビリティの確保

マネージドサービスは初期コストこそ高めですが、運用負荷の軽減や専門性の高いサポートにより、中長期的には高い費用対効果を実現できます。
ある程度の規模のWebサイト、複数のサイトをお持ちの場合であれば、まずはクラウドサーバ+マネージドサービスを検討してみることをおすすめします。
実際の企業事例で見る「正しいサーバ選択」の効果
ここからは、プライム・ストラテジーがご支援させていただいている企業や団体のWebサイト、サーバに関する事例を取り上げてみます。
【株式会社リアルゲイトの事例】

リアルゲイト社では、IPOを行うにあたりWebサイトのセキュリティ面やサーバ保守運用体制を構築することが必要でした。
当時は安さでレンタルサーバの運用をされていたのですが、このままではセキュリティ対応や緊急時対応への不安があり、クラウドサーバによる柔軟性とマネージドサービスによる保守運用体制の構築を実施されました。
営業でWebサイトを見せてお話されることもあるようで、モバイルサイトでも高速表示がされるという部分も大きなポイントとしてご評価いただきました。
事例はこちら:https://kusanagi.biz/case/realgate/
【株式会社新潮社の事例】

株式会社新潮社の大型メディアサイト「デイリー新潮」は、なんと月間8,000万ページビューを超えるようなサイトです。
更に即時性のある話題の場合には一気にアクセスが集中することもあったため、表示がとても遅くなりユーザーの離脱が深刻な問題となっていました。もともとクラウドサーバを使っていたもののサーバがダウンすることもあり閲覧不可になる時間が発生してしまっていたことから、本来得られるはずの広告収益を毀損してしまっている状況でした。
そこで、クラウドサーバを適切に構築し、高負荷に耐えられるようにしたうえでWebチームの皆様のトラブル時の負荷を軽減するためにもマネージドサービスで運用の多くをお任せいただく事になりました。これにより、機会損失の防止と読者満足度の向上を同時に実現しています。
事例はこちら:https://kusanagi.biz/case/shinchosha_dailyshincho/
その他にも多くの企業様事例がありますのでご興味ある方はぜひ覗いてみてください。
https://kusanagi.biz/case/
WordPressサイトを選ぶ際のチェックリスト(自社に最適なWordPressサーバの見つけ方)
ここまでの内容をチェックリストの形でまとめてみます。ぜひ活用してみてください。

技術要件チェック
WordPressに最適化されたサーバ環境か
アクセスや負荷状況に応じてサーバを調節できるか
対象とするWebサイトの規模や会社へのインパクトから見て、適切なサーバか
必要なPHPバージョンに対応しているか(最新版が利用できることが理想)
データベースの性能は十分か
バックアップ機能は自動化されているか、設定できるか
SSL証明書の取得・更新は問題ないか
セキュリティチェック
WordPress/プラグインの自動更新は問題なくできるか
二段階認証などの基本的なセキュリティ対策がとれるか
WAF機能が利用できるか
その他のセキュリティ機能を追加できるか
不正アクセス検知機能があるか
定期的なセキュリティ診断が実施されるか
運用サポートチェック
対象サイトに必要なサポート体制になっているか?(営業時間内対応、24時間365日の対応)
社内に運用できる人がいるか、外部の支援を借りる予算を作れるか
技術的な相談に対応してもらえるか
障害時の一次対応(復旧対応)をしてもらえるか
運用代行サービスがあるか
コスト・契約チェック
料金体系は明確で予測可能か(なるべく固定金額か)
従量課金による予算オーバーのリスクはないか
契約期間の縛りは適切か
サービスレベル保証(SLA)が明記されているか
将来性チェック
事業拡大に応じてスケールアップできるか
新しい技術への対応は迅速か
長期的に良い関係を築けそうか
まとめ:WordPress サーバ選びで成功するために
ここまでご覧いただき、ありがとうございました。
企業の WordPress サーバ選択において最も重要なのは、「初期コストの安さ」ではなく「中長期的な価値」を見極めることです。セキュリティ、パフォーマンス、サポート体制、コスト予測可能性、BCP対策の5つの基準を軸に、自社の事業戦略に合致したサーバ環境を選択しましょう。
特に、運用負荷の軽減を重視する企業には、アプリケーションからインフラまでを一貫してサポートするマネージドサービスの検討をお勧めします。専門エンジニアによる24時間体制でのサポートにより、Web担当者が本来の業務に集中できる環境を構築できます。
適切な WordPress サーバの選択は、単なるコスト削減以上の価値をもたらします。サイトの安定稼働、セキュリティの確保、運用効率化を通じて、企業の デジタル戦略を成功に導く重要な投資として位置づけることが大切です。
プライム・ストラテジーでは、「KUSANAGIマネージドサービス」として企業様のWordPressサイトをフルマネージドで保守運用いたします。数千万ページビュー級の大型サイトから、堅牢なセキュリティ対策を行いたいサイト、また5サイトや10サイトなど複数のサイトをまとめて運用最適化したいというご要望などに多くお応えしてきました。ご興味のある方は、ぜひこちらのページをご覧ください。
KUSANAGIマネージドサービス:https://kusanagi.biz/managed-service/
執筆者/穂苅 智哉(プライム・ストラテジー株式会社 マーケティング&セールス部 マーケティング室 室長)
2016年からプライム・ストラテジーに入社し、営業・ディレクター・マーケティング・アライアンスを経験。
2021年から、外資IT企業にてパートナービジネスを担当する、Partner Development Managerとして、数十のパートナー企業様を担当し、双方のビジネス拡大のために活動。
2025年から、再びプライム・ストラテジーにてマーケティング室 室長として社内マーケやパートナープログラムなどを担当。
仕事以外では、旅行、釣り、ロードバイク、ドライブ、温泉・サウナ、ジャズ、カフェ巡りなどアクティブ派。今年はパラグライダーとキャンプをやってみたい。
主な著書:WordPressの教科書5.x対応版、WordPressの教科書6.x対応版
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