
こんにちは、ゼノクリース合同会社 CEO の齋藤です。このコラム記事では、企業の Web ガバナンスや最新情報について紹介しています。
Web サステナビリティガイドライン (Web Sustainability Guidelines / WSG) という言葉をお聞きになったことはあるでしょうか?
「サステナビリティ」という言葉は、SDGs (Sustainable Development Goals / 持続可能な発展目標) の文脈でも馴染み深いと思います。Web においても、持続可能性を扱うガイドラインについて検討されています。今回のコラムでは、このことについてご紹介します。
Web Sustainability Guidelines は Sustainable Web Interest Group が策定を進めているガイドラインで、2026 年 3 月時点では W3C の Draft Note / Group Note Draft として公開されています。
この記事の著者

ゼノクリース合同会社 代表(Web)
斎藤 智樹
X:@TomokiSaito0920
スタンディングテックのWEB開発コース主任講師を務める。
Web Sustainability Guidelines (WSG) とは何か
WSG は、デジタルチームが持続可能な判断をするためのアドバイス集です。意思決定の軸として、Planetary(地球)、People(人)、Prosperity(繁栄)の PPP アプローチを採用しており、デザイン、開発、インフラ、運用、ビジネス戦略までを横断して扱っています。構造は WCAG(W3C が策定した、Web サイトやコンテンツを、障がいを抱える方や高齢者を含むすべての人が利用できるようにするための国際的ガイドライン)にインスパイアされています。
現行の構成を見ると、① UX デザイン、② Web 開発、③ ホスティング・インフラ・システム、④ ビジネス戦略・プロダクト管理の 4 カテゴリにまたがっており、かなり実務に寄っています。
現行の GitHub リポジトリでは 80 ガイドライン / 225 達成基準 / 142 Advisory Techniques(STAR)という統計が示されています。
個人的には「何本あるか」は重要でなく、どの論点が自社運用に関係するかを判断して、社内で改善していくためのヒントとして捉えるかが有用だと考えています。
ちなみに、WSG は AI も射程に入れています。5.20 の項目では、AI などの導入にあたって環境面の考慮をすることや、Bot がサイト側のオプトアウト(スクレイピングしないでほしいという方針)を尊重することなども扱われています。AI 活用の話と Web ガバナンスがつながるのは、このあたりにも表れています。
Quick Reference for Web Sustainability Guidelines (WSG) の 5.20 の項目で確認することができます。
Web 担当者にとって、新たな視点となり得るポイント
W3C のブログ記事 “Sustainable Web Interest Group is formed” の中に、
「デジタル産業が世界の排出量の 2〜5% を占め、航空業界を上回る」
「もしインターネットが一つの国なら、世界の上位 5 位級の汚染国になる」
というような、あまり Web の運用をする上で深く考えたことがないかもしれないという意味で面白い表現があります。
言いたいことはシンプルで、Web サイトでの重さや無駄(やらなくて良い処理など)は、UX だけでなく環境負荷にもつながるということです。
環境問題だけでなく、W3C のニュースや本文を見ると、アクセシビリティ、国際化、プライバシー、セキュリティなどとの関係も強く意識されています。
このような観点は各種問題を点ではなく面で捉えることができます。関連を深めていくことで、知識のネットワークを張って、より深い理解を得ることができます。
そのため、サステナビリティ対応は単なる綺麗ごとではなく、Web ガバナンス全体をどう設計するか、考え方そのものを身に付けて、腑に落ちる形で周囲に説明して推進することができるようになる良いフレームワークだと考えています。
具体的な実施例は?
WSG のクイックリファレンスを読むと、現場でやることは意外と見慣れているものです。例えば、これらです。
- 不要な JavaScript やデッドコード(使用していないコード)を削る
- 画像や動画を最適化する
- 帯域の重い機能を分割する
- サードパーティのタグやウィジェットを減らす
- キャッシュと圧縮を効かせる
- サーバーのスペックなど、インフラを過剰に積まない
- 不要データを削除する
単に「よく考えて CO2 削減をしましょう」というだけではなく、それを実現するための具体的な手段が示されています。そして、これらを実現していくと Web サイトやシステム自体の競争力を高めることにも繋がるような項目になっています。
つまり、すでに多くの企業が取り組んでいる表示高速化・軽量化・棚卸しの延長線上に WSG がある、ということです。WSG はそれらを「速いサイトを作るため」だけでなく、「人と地球への負荷を減らすため」にも位置づけ直しています。
Web サステナビリティガイドライン を、どのように捉えるか
Web 担当者にとっては、新しい仕事が突然増えるというより、これまでの改善活動に新しい説明軸が加わる感覚に近いと思います。
このポイントは「新たな観点や気を付けるポイントが増えて、日々の運営が大変になってしまう…」ではなく、「日々の運営で行っている施策の効果や、今後行いたいことを会社や関係者に説明する上で、新たな説明方法が加わる」ということで、ポジティブに捉えると良いのかなと考えています。
GMOプライム・ストラテジーでは、複数 Web サイトの統合運用を支援する Web / CMS プラットフォーム統合サービスや、Web ガバナンスガイドラインの提供を通じて、こうした整理を進めるための支援も行っています。自社の Web ガバナンスを見直すきっかけとして、あわせて活用を検討してみてはいかがでしょうか。

【この記事の著者】
ゼノクリース合同会社 代表(Web)
齋藤智樹
在学中から高校や予備校、IT 企業に携わり、講師とソフトウェアエンジニアとして活動。
大学卒業後 (2020年4月〜) はフリーランスエンジニアとして活動を始め、以下のような幅広い業務を行う。2021年3月に、業務を拡大させるためにゼノクリース合同会社を設立。スタディングテックの WEB 開発コース主任講師も務める。

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