
プライム・ストラテジー株式会社 執行役員 兼 マーケティング部長の松隈です。
「MAGATAMA Stack」の機能の中でも、特に経営層や情報システム部門の皆様から高い関心をいただくのが「情報コレクション」という概念です。
前回のコラムでは「ナレッジの流動化による組織IQの最大化」についてお伝えしましたが、今回はもう一段掘り下げて、この「情報コレクション」が、ビジネスの現場における「情報の統制」と「活用の最大化」、そして「コスト最適化」をどう両立させるのか、その核心に迫ります。
情報を「混ぜない」ことが、AIの賢さを引き出す
RAG(検索拡張生成)を導入する際、多くの企業が陥る罠があります。それは、社内のあらゆるデータを一つの「大きなバケツ(ベクトルデータベース)」に放り込んでしまうことです。 一見、データが多ければ多いほどAIが賢く答えてくれそうに感じますが、実際には様々な種類の情報を一箇所に集めすぎると、AIは回答を探す際に「ノイズ(不要な情報)」に惑わされ、精度が低下します。これを防ぐのが「情報コレクション」という考え方です。
1. 組織の権限に基づいた「情報の境界線」
MAGATAMA Stackの「情報コレクション」は、いわば「デジタル上の書庫」を部署やプロジェクト単位で論理的に切り分ける機能です。
- 人事・労務コレクション: 就業規則、評価基準、個人情報を含むドキュメント
- 営業・マーケティングコレクション: 秘匿性の高い提案書、過去のコンペ資料、最新の市場分析
- 全社共有コレクション: 福利厚生案内、社内報、プレスリリース
最大の特徴は、これらがMicrosoft Entra ID(旧Active Directory)などの既存で導入されている統合認証基盤と連動できる点です。「誰がどの書庫にアクセスできるか」を厳格に管理することは、企業のガバナンスを技術的に担保する大前提。例えば本来は人事部しか見られないはずの給与情報や、経営層限定の戦略資料が、一般社員の検索結果に露出してしまうリスクなどがあっては企業システムとして失格です。
2. 「専門特化」による回答精度の向上
社内の全データを無造作に投入するのは、図書館の床に数万冊の本をぶちまけて、「さあ、ここから正解を探せ」と司書(AI)に命じるようなものです。
たとえ優秀な司書でも、床に『2010年の旧マニュアル』と『2026年の最新規定』が混在していれば、誤って古い方を手に取ってしまうでしょう。「人事の棚」「技術の棚」のインデックスを整理し、不要な情報をあらかじめ破棄しておく。 この徹底した準備があるからこそ、司書は迷わず正確な一冊を差し出せるのです。
適切な文脈(コンテキスト)に限定して探索させることは、ハルシネーション(もっともらしい嘘)のリスクを最小化することに直結します。つまり、RAGの成功はAIの性能以上に、「司書にどの棚を参照させるか」という情報のガバナンス設計にかかっているのです。
3. 多彩なデータソースとの連携
「情報コレクション」に格納できるのは、単なるテキストファイルだけではありません。以下のような多様なソースを「一つの知識群」としてまとめ上げることができます。
- ファイルサーバー: 社内の共有フォルダに置かれたPDFやExcel,Wordファイル。
- クラウドストレージ: BoxやMicrosoft SharePoint上のドキュメント。
- Webサイト・ソースコード: 自社サイトのコンテンツや、エンジニア向けのソースコード一式。

戦略的モデル選定:タスクに最適化されたLLM運用
MAGATAMA Stackの真骨頂は、情報コレクションごとに「利用するLLMを柔軟に選択・制御できる」点にあります。これは、ROI(投資対効果)を最大化するための極めて重要な経営戦略です。
「適材適所」がもたらすビジネス価値
すべての業務に一律に最高スペックのモデル(GPT-4o等)を割り当てる必要はありません。タスクの性質に応じて知能を使い分けることで、真の効率化が実現します。
- 高度な推論を要する「戦略分析」: 高性能なフラッグシップモデルを選択し、精緻な洞察を導き出す。
- 定型的な「社内規定の要約」: 軽量・安価なモデルやOSSのローカルLLMを活用し、ランニングコストを最小化する。
- 機密性の高い「法務・コンプライアンス」: セキュリティ要件を満たす特定のリージョンや、クローズドなモデルに限定して運用する。
このように、「情報の重要度」と「必要な知能のレベル」を掛け合わせることで、スピード・精度・コストの三要素を最適化します。これは単なる技術的な工夫ではなく、IT資産を最大効率で運用するための「経営判断」そのものです。

ビジネスインパクト:情報の「属人化」から「資産化」へ
この「情報コレクション」と「LLMコントロール」をマネージメントの視点で見ると、最大のメリットは「ナレッジの即戦力化」にあります。
例えば中途入社の社員に対し、適切なコレクションへのアクセス権を与えるだけで、彼らは「過去の成功パターン」や「製品の技術仕様」を、先輩社員の手を止めることなくAIから引き出せるようになります。 これは単なる「効率化」ではありません。組織が持つ「見えない資産(暗黙知)」を、誰でも・いつでも・安全に使える「流動資産」へと変える、戦略的な投資なのです。
明日へのアクション
まずは貴社のデータが「誰が、どの範囲までアクセスしてよいものか」という棚卸しから始めてみませんか? その区分けこそが、MAGATAMA Stackで構築する「情報コレクション」の設計図となり、ひいてはAI活用によるROIを最大化する第一歩となります。
[MAGATAMA Stackの詳細・お問い合わせはこちら]https://www.prime-strategy.co.jp/magatama-stack/

